「そ…………そうじ?」



恐る恐る顔を上げるとそこには息を切らした総司の姿が。


雨でビチョビチョの総司は傘もさしてなかった。


なんで、なんで、こんな時に限ってこうなのかなぁ。


私に勘違いばっかりさせる。酷い、とっても酷くて、優しいの。


近づいてきた総司は指を食んでいた私を見ると驚いて手を引っ張る。



「総司は…………酷いよ」

「え?」

「嫌いならそう言って? ……じゃなきゃ私だってどうしようもないのっ!

傷つけないようになんていい! 嫌い、大嫌いだって、そう言ってよ……!」



もやもやしてるのが一番嫌い。


上辺だけでも良いの。だから、私に執着心を残させないで。


少しでも期待させるような部分を残さないで。


知らず知らずのうちに涙が溢れる。



「茅野…………ちゃ、ん。…………」



またそうやって呼ぶ。優しく、包み込むような声で。


ボロボロ零れる涙。



「嫌い、だいっ嫌いっ…………」



総司にひどく執着してる私が。



「もう、突き放してください!」



嫌いになったと、はっきりと言って下さい。


涙で歪んだ視界は少しずつ暗くなって。



「こんなに固執している私を」


壊してください、と口に出す前に、私の意識は完全に閉ざされた。