妖しの姫と天才剣士




視界一杯に藤堂くんの顔が広がって、すぐに離れた。


けど、分かる。口の端に触れた熱は確かに––––。



「なぁ、何で…………総司なんだ?

これ以上総司を好きなままで居たって、あいつは、きっと態度を変えないよ。

俺だったらそんな思い絶対にさせないのに。

…………沙雪、俺の事を好きにはなってくれないの?」

「…………」



藤堂くんは何が言いたいの?


いや、そんな事分かってる。


でも、それじゃ藤堂くんは私の事……。



「と、とう––––」

「おい、平助〜? おっ、沙雪も居るのか。

……おいおい、沙雪。何泣いてんだよ。まさか、平助に泣かされたのか?」

「そんな訳無いだろ! 変な事言うんじゃねぇよ、左之さん!」



気まずい空気が流れた直後に向こう側から左之助さんが現れた。


ふっと視線を逸らした私に佐之さん何か言いたげに口が開いた。


けれど、その口はすぐに閉じられる。



「失礼します」



すくっと立ち上がると顔を上げないまま私はその場を離れた。



「沙雪!」

「はい」

「あんまり思い詰めんなよ? あいつにだって何か訳があるんだ」

「…………」



何で悩んでるのか、バレてる。


一言もそんなこと言ってないのに。



「それが厳しい事ぐらい、俺にも分かってるよ。ただな––––––」



佐野さんの言ったことに喉を詰まらせる。



「ただの戯言だと流してくれたって一向に構いやしない」



ふっと笑った左之さん。



「そう……ですね」



左之さん。何で、今それを言っちゃうんですか。



『あいつもあいつなりに悩んでるから。それがはっきりするまで待ってやってくれないか』 



なんて。