「総司」
「ごめん、ちょっと用事あるからさ」
そう言って私から離れていく総司。
何だろう、最近総司にずっと避けられてる気がするんだけど。
部屋でも顔を会わせなくなったし、話しかけても別の事考えてるように見える。
……もう私の事好きじゃないとか?
触ってくれすらしないし。
前はあんなにベタベタしてたくせにぃ〜っ!
嫌いなら嫌いって言ってくれればいいのに。
「よっ、沙雪!」
「ひゃ⁉︎」
ポンっと肩を押されてよろける。
いつもだったらすぐに気づけるのに……、感覚が鈍くなった?
振り返るとそこには藤堂くんの姿が驚いたような表情を見せながら立っていた。
何で、そんなに驚いた顔を?
「沙雪、大丈夫か?」
「大丈夫って……私は何も変わらないよ、藤堂くんの方こそ何で?」
「お前がこの距離で気づかないとかありえないでしょ。……もしかして、総司と何かあったのか?」
「別に、何にもないって」
総司の名前が出た瞬間、体が強張ったのが分かる。
すぐに元通りに取り繕ったけど意味ないかな。
思わず感情が溢れ出しそうになって唇を噛み締めた。
「なぁ、沙雪。俺じゃあ頼りないかも知れないけど頼って……って何泣いてんだよ⁉︎」
「え?」
私、今泣いてるの?
なんで、今、泣く場面じゃないのに。
頰に手をやると確かに濡れる感覚。
「……ちょっと来い」
「と、藤堂くん⁉︎」
強く腕を引っ張られると私はなす術もない。
藤堂くん、総司より手が小さい……?
そう思って気づく。私、こんな時でも総司のことが頭に掠める。
そのことに気づくと総司のことばかり考えているに嫌気がさした。