妖しの姫と天才剣士





それでも、例えいつ死んだとしても僕は新選組と共にありたい。


さゆの近くに居たいんだ。


その決意を察したように山崎君は今度は目に見えて困ったような表情を浮かべた。



「総司、お前に一応これを預けておく」

「? 何これ」


ペラっとした紙。に墨で……なんて書いてあるのこれ。


山崎君、こんなに字汚かった? なんて書いてあるか全くもって分からないんだけど。



「護符だ。その呪にも効くかは分からないがな」

「ありがと、一応受け取っとくよ」



ペラペラとそれを振りながら僕はその場を離れる。


けど、ふと思い出して足を止めた。



「一つ言いたいんだけどさ」

「何だ」

「山崎君、そんなに喋るなんて……らしくないよ」



嫌味のつもりで言ったのにしれっとした顔。つまんないな。


やっぱり楽しくない。土方さんとか三馬鹿とかとは違う〜っ!


山崎君はいつも隊士とは一つ壁を挟んでいるような気がする。


それは幹部でも言わずもがな。


そんな山崎君が他の人の心配するなんて、そんなの山崎君じゃない。


まぁ、その親切はありがたく受け取っておこうとは思うけど。


それほどまでに弱そうに見えちゃうのかな? 僕は。


懐にその護符を入れ込んで、僕は背伸びをした。


木枯らしで髪の毛が揺れる。


視線に入ったのは木の葉の失った桜の木が目に入った。


あの時見たあまりにも季節外れだった桜の木。


ちゃんとした桜をさゆと見れればいいけどね。



「見てみたい」


と、その言葉は口に出せない。


だって、出してしまったらその時にはもう既にその夢が叶わない気がするから。