妖しの姫と天才剣士




「おっ、名案!」



総司は真面目な顔でポンと手を叩く。


いやいやいやっ!



「名案じゃないですよっ! 私、危険しか感じないんですけどっ」



土方さんさんだって理解してるでしょう! 絶対に!


総司と相部屋なんて……!



「良いだろ、襲われる訳じゃあるまいし。

それに、付き合ってるなら抵抗も少ないだろ?」



しれっと言い放つ土方さん。


それを言われると否定できなくなるでしょうが!


他の部屋、それも土方さんの部屋なんて失礼だけどごめんだ。


胃痛が酷そう。


隊士に襲われる事は確実にないけど、土方さんの心労は移して欲しくない。



「あんまり屯所の中でイチャイチャすんなよ?

隊士から反発買う」



言いたいだけ言ってどこかに行くなんて……っ!


鬼だよ、鬼。やっぱり土方さんは鬼の副長だよ。


土方さんまで私の反応見て楽しんでる。何で皆私の反応を見て楽しんでるの?


そんなに私、面白くないですよ⁈


頭を抱えた私の肩を総司は叩く。



「今日は夜回りだったよね。暇ならちょっとだけ寝ときなよ?」

「了解です。組長ー」



嫌味っぽく組長って呼んでみる。


何も影響はなさそうだけど。


でも、頭の上から覗く顔は……怖っ。



「総司だよ? さゆ」

「〜〜〜〜っ! 了解しましたよ、総司っ!」



手を振る総司。


大股で歩きながらため息をつく。


寝れそうな気は全くしないけどね。





案の定、寝れずに夜回りに行く事に。


欠伸を噛みしめる私を刀の柄で小突く。



「寝てないんだ〜」

「うるさいでふ」

「でふって……」


そうして、その1日は終わった。


今日痛いほど身に染みた事は。


総司は怖い。怒っても、笑顔なんて恐ろし過ぎるよ。


後は、私も寂しがりだって事かな?