妖しの姫と天才剣士




随分と刻は経って、夕暮れ。



狐の姿になって休んでいた水孤さんも人の姿に変化していた。


じゃないと、怪しまれるだろうからそれは当たり前だろうけどね。



「じゃあ主、我らは帰る。

……しばらくは面倒なことになるだろうが守ってやれよ、姫様を」

「はぁあっ⁉︎ 面倒って何なのさっ。

……まぁ、言われなくても守るよ。さゆの事は」



最後の言葉は私の耳元で囁かれる。


一気に顔に熱が集まる私。


絶対、わざとだっ。私の反応を楽しんでるよ。


そんな私を見て大きな声で笑い、手を振って雷狼さんたちは帰っていった。


どこに帰るんだろ?



「おい、茅野。……そう言えばだがお前今どこで寝泊まりしてる?」

「物置部屋ですよ。最近、訪ねてくる人が多すぎてよく寝れません」



夜でも関係なしに部屋の前ドタドタ騒がしいし、見知らぬ人が訪ねてくるし。


こんなの左之助さんを初見で一本取っちゃった時でもなかったのに。



「ええっ⁉︎ 何それ、初耳なんだけど」



唇を尖らせた総司をとりあえず無視。何故今更そんな事を。



「やっぱりな。最近、隊士の連中がざわざわしてやがる。

どうやら、お前が女らしい……とか、総司との距離が近いだの。

バレてる可能性が高いな」



ええっ。私が女だってばれたの⁉︎


今までバレなかった事が奇跡かもしれないし、こんな女っ気のない私なんてどうせ誰も気にしない。と思ったのだが。


……それってまずいよね。


色々と、それはもう色々と厄介な事になりそうな気がする。



「…………茅野。お前、総司の部屋で過ごせ。

そしたら、下手に近づく奴なんて居なくなる筈だからな」



……はい? 土方さん? 今何と仰いましたか……?