妖しの姫と天才剣士




ああ……、でも。私だってきっとそう。きっと誰かの掌の上で踊らされているだけだ。


ここに居て、雷狼さんたちと話している事ですら。


そう、柄でもないことを考えてしまう自分がいた。



「姫様。私は姫様に言いたい事があります」



私の前にまで来た水狐さん。かと思ったらど、土下座⁉︎



「ち、ちょっ、水狐さん⁉︎」

「私は、姫様を守る事が出来ませんでした。

今の姫様とは違うのかも知れません。ですが、これだけは言わせてください。

申し訳ございませんでした。

私を守ってくれた姫様を私は助ける事が出来なかった」



私が言えるのはただ一つ。


何故今それを私に⁉︎


美琴と私は違う。それだけは確かに言える。


私には、雷狼さんたちのように記憶を持ち合わせてはないから。


水狐さんを助けた訳じゃないし、皆に崇められるような覚えもない。


私は神代美琴じゃない。聖女みたいな生き方はしてない。


私は、茅野沙雪は、人を殺めて生きてきた。


人の中でも底辺のような生き方をしてた私だよ?


そんな私に頭を下げるなんて。