妖しの姫と天才剣士




「相変わらずつれねぇな、総司は。で、何の買い出しだ?」

「手入れ道具を。お願い」

「りょーかい! その前にお嬢ちゃんその刀を見せてもらえるか?」

「はい」



沙雪は腰に差していた刀を抜くと差し出した。



「…………! これは」

「どうかしました?」



簡単にだろうけれど見ると一気に顔色を変えたおじさん。


どこか悪いところでもあったのだろうか?



「いやいや、何でもないよ! ありがとさん。良い刀だから丁寧に扱えよ!」

「はい」



おじさんから刀と一緒に手入れ道具を受け取る。


妙に話を逸らされた気がするのだが気のせいだろうか?


でも、わざわざ追求しない。話したくない事を話す必要はない。


すると沖田さんがその間に巾着の中から料金を払っていた。



「後で、私が返すから」



なんだか、申し訳ない。


今持っているのはそこまでないけど、借りたものはちゃんと返すべきだと思う。


何からでもいい。ちゃんと返すつもりだ。



「返さなくていいよ、どうせ土方さんのだし」



だからこそ、だったのに。


あの人怒らせると怖そうだから。



「返す方が怒られそうだけどね」



そうなのか?



「じゃあ、次は呉服屋に行こうか」

「え、あ、ちょ‼︎」



私は沖田さんに強引に引っ張られた。


この人は人の話を聞く、という事を知らないのだろうか?