「話は一千年近く前にまで遡るだろうか––––」



そこでふっ、と意識が遠のきそうになる。


まるで、思い出すなと警告されているようで。


今さっき浮かんだ光景がまた浮かび上がってくる。



斧を持った村人、綺麗な人に……私?


いや、似てるけど違う。


何なの、あれは––––



「大丈夫? さゆ」

「ん? ああ……大丈夫、だと思う」



えっと、私は……何してたんだろ。


ぐらぐら揺れる視界は全然良くないけど、心配かける訳にはいかないしね。


心配そうな表情をした総司に私はそっと笑顔を向けて、手を握る。


大丈夫だからって、伝えるために。


多分納得はしてくれないだろうけどね。


表情がそうじゃない。



「済まぬな、姫様。話を続けさせてもらっても良いだろうか」

「構いません。続けてください」



身に覚えのない事で追われるのは嫌だからね。


自分の事を知りたい。


それはきっと今まで私が自分の事を知ろうともしてなかったせい。


死人のような私に生きる目的が出来てしまったから。


真響の言っていた事、雷狼さんの言う意味。


それから逃げる訳にはいかない。


逃げられない。



「我らが人間であった時北の山奥に我らは居た––––」