妖しの姫と天才剣士





途中から追いついた沖田さんに案内されて、今さっきまでいた部屋にまで戻る。



「お前はとりあえず一番隊所属だ。組長は総司。後は部屋だが……」



そこまで言うと副長は考え込んだ。


女子である私を普通の隊士の中に放り込む事は出来ないだろう。


でも、幹部と同じ待遇でも怪しまれる。


急に入ってきた新入りなのに。


まぁ、左之助さんを負かした事実が広まっているとしたら。


結局は変わらない事なのかもしれない。



「お前はとりあえず離れの倉庫部屋だ」



どの場所にあるかは分からないが、目立ちにくいところにある事だけは分かった。


倉庫というところからもそんなにいい場所ではないことも。



「おい総司! お前今日非番だろ?」

「はい! そうですけど〜」

「じゃあ、茅野を呉服屋まで連れて行け。刀はいいだろう。

服代はとりあえず俺が出す」



私の服?


私が持ってるのは今着てる物だけ。


確かに、これだけじゃ無理だな。


あちこちボロボロだし、煤けてるし。



「ありがとうございまーす」



素直に巾着袋を受け取った沖田さんはニヤニヤとした表情を浮かべた。


あ、これはいらないことを考えてるなと、すぐに分かる。



「余計なもんまで買ってくんなよ!」

「分かってますって〜!」



念を押した土方さんだったけれど、それはあまり効力を発揮していないようだ。





だって、



「団子どれだけ食べようかなぁ〜」



とか言ってるのが聞こえる。


いや、もしかして聞かせようとしてるのか?


……考えないことにしよう。