妖しの姫と天才剣士




「おいおい平助。お前、しんぱっつぁんの隊と昼の見回りじゃなかったか?」

「もう、終わったよ〜。今日もなーんにもなし。安全なのはいいことさっ」



胡座をかいた左之助さんに藤堂さんは近く。


しんぱっつぁんと言うのも幹部なのだろうか?


あだ名のようだ。



「おい、平助! 勝手に左之のとこ行くなって言っただろ?

俺を置いていくなっ! って、土方さんたちじゃないか。

どうしたんだ? 珍しい」



ドタドタと足音を立てながらやってきたのは男の人。


彼がしんぱっつぁん?



「って、お前何座り込んでんだよ〜。

ただ、の訓練で疲れたってのか? お前サボり続けてんじゃねぇかよ」

「ハハッ。左之さんが訓練で疲れる訳ないじゃん! 僕じゃあるまいしねぇ〜。

ここで座り込んでるのは負けたからだよ。彼女に」



一斉に向けられる視線。

その目にはこんな奴が? と侮ったような感情が見え隠れしている。


イラッ。



「へぇ〜。そんな強いんだ、君。どう? 一回僕と組まない?

左之さんみたいにすぐ負けない自信あるよ?」



口角を上げた藤堂さんの襟首を土方さんが掴む。



「な、何すんだよ! 土方さん!」

「こいつはまだ用があんだよ。こんな所で時間食ってる暇はねぇんだ。

今度、引っ捕まえてでもやりゃいいじゃねぇか」



上から目線で見下ろす土方さんにバタバタと暴れる藤堂さん。


ああ……本気で犬に見える。


ちっこいから子犬。



「ちぇーっ。じゃあさ、沙雪の隊は何処? 決まってないなら僕の隊に––––」

「それだけは絶対ない。それに、何処の隊に入れるかなんてもう決めてるよ」



土方さんは手を離すと腕を組んだ。


その表情は呆れしか浮かんでいない。



「おい茅野、総司、戻るぞ。此処に長居する意味はねぇからな」



そう言うと土方さんはさっさと出て行ってしまった。


追いかけない訳にも行かないので竹刀を左之助さんに返して、土方さんたちを追いかけた。