妖しの姫と天才剣士




ドサリと何かが落ちる音。



「––––––茅野!」



土方さんの叫び声。


そうだ、茅野ちゃんは……!


急いで茅野ちゃんに駆け寄るとその肩を揺すった。


全身から力の抜けた様子の茅野ちゃんは俺の腕の中でダラリとして一向に動かない。



「茅野、茅野ちゃん!」



ようやくうっすらと目を開いた茅野ちゃん。



「……ダイ」

「え?」


なんて言ったのか上手く聞き取れなかった。


聞き返そうと耳を近づける。


すると俺の頬に付いた由羅の返り血を舌で茅野ちゃんは舐めとった。


舌のザラリとして、温かい感触に体が強張る。


な、何してるの?


顔を顰めた茅野ちゃんは一言「不味い」と言ったかと思うともう一度意識を落とした。


……え、ええっ⁉︎


か……やのちゃん⁉︎