妖しの姫と天才剣士




戦況が動く。



「っ!」



後ろに飛んだ由羅は腕を押さえて膝をつく。


やっぱり、総司は強い。


圧倒的に総司が有利だった。


でも違和感がある。


何だろ、少しいつもと違う。


寸前のところで致命傷の怪我を負わせてないみたい。


どこかで躊躇っているような。



「ああ、そういう事。

君は紅雪が殺される事が怖いんだ」

「…………」



由羅の問いに無言を貫く総司。



「そう、そうだよねぇ! だって僕がかけた呪符だ。

いつだって殺せるさ」



こちらに振り返った由羅は一枚の呪符を取り出す。


それが破り捨てられた。



ドクッ––––と心臓が跳ね上がる。


首が締め付けられる感覚に声が漏れた。



「っぐ、あっ」

「茅野⁉︎」



やばい、苦しい。


息が詰まって、呼吸が出来ない。



「茅野……ちゃん?」



総司の顔が変わる。


駄目だ、苦しんでる所を見せたら。


総司の戦いに水を差してしまう。


もうこれ以上私のせいで皆の足を引っ張りたくない。


そう思うのに息苦しさは一向に消えずに逆に酷くなってる。



「は…………ぁっ…………」



涙で視界が霞む。


気にしちゃ駄目だって、そう叫びたいのに。



漏れるのは苦しみに悶えた声だけ。