炎の消え去った場所に妖は居ない。
全部燃え尽きていた。
土方さんたちは……大丈夫みたいだな。
怪我をしている様子はない。
「ったく。あいつは何してぇんだ?」
私たちの所まで下がってきた土方さんは苛立ちを隠しきれてない。
「さぁ? 自分で味方減らして何したいんでしょうね?」
「能天気過ぎやしねぇか? 総司」
「いやいや。そうは思いませんけどねぇ〜」
うん、確かに軽すぎると思う。
だって確実に土方さんの苛立ちを逆撫でしてるもん!
怒らせないで欲しいな、まだ終わってないのに。
「後で覚悟しやがれよ総司……」
「それも後があれば、ですけどね」
総司が由羅へと視線を向けた。
由羅はその口に血を滴らせている。
その血は土方さんたちが傷つけたものではない。
だって、土方さんが攻撃していたのは妖だけ。それで精一杯だったから。
山崎さんの影梟の攻撃も実際はそこまで効いていなかったみたい。
血は由羅が自分で流したもの。その意図は……まだ分からない。
ニヤリと妖しげな笑顔を浮かべた由羅は血で滑った唇をそっと開く。
「ねぇ、勝負しよ? 沖田総司。
そこに居る姫君を賭けて」
そう言って指差しているのは。
「わ、私!?」
「テメェ以外に誰が居んだよ。ここ男しかいねぇんだぞ?」
た、確かに。
「一騎打ち–––––だよ。
守る侍と奪う忍。
一体どっちが勝つかなぁ?」