妖しの姫と天才剣士




「相変わらず容赦ねぇ。もうちょい手加減しろや」

「嫌です。そう言う『契約』なんですよ。この力は重要なんですから」



契約?


副長と総司の間に軽いけど私には分からない会話が交わされる。


粉塵が晴れた時、私はそこに居たものに目を奪われた。


黄色というより黄金に近い光を纏った漆黒の狼。


あれが総司の言った雷狼?


その狼はゆっくりと総司の側に来ると。


座り込む。


あ、戦わないんだ。


結構強そうなのに。



「ハハッ! 何なのさ、新選組ってやつは。怪物ばっかなわけ⁉︎」



焦った様子の由羅に大きな翼を広げた梟が迫る。


護符を投げつけた由羅だったが、その護符は苦無に貫かれた。


そして由羅は梟に大きく弾き飛ばされた。



「俺の影梟《カゲ》を倒せるとでも?」



その声は山崎さん。


いつもの関西弁が抜けている。



「……弱いな」



斉藤さんは抜いた刀を再び鞘に収めていた。


離れた場所には霧散した妖が。


その足元には狐? 青い色をしているけど。


斉藤さんの周りには先ほどは見られなかった水たまりができていた。