妖しの姫と天才剣士




それから二刻程経ってから私たちは動き出した。


屯所の中もすでに寝入ってる時間。


人影はない。


それは目的の場所に近づいても一緒で、気配を感じられなかった。


と、その時。



「おおっ。随分と大人数で来ましたなぁ〜。しかも全員幹部級?

うむうむ。紅雪は重宝されてます」



そんな声が上から聞こえる。


見上げると木の上に由羅の姿が見えた。



「先手必勝。だよね?」



っ!


にっこりと気味が悪いくらいに上げられた口角。



高速で投げられた物を抜いた刀で斬る。


これは……呪符?



「くふっ。君らはもう逃げられない。……大人しく殺されて。

そして呪うといいじゃん、自分の決断を。

こんな事に巻き込んだ張本人である紅雪。

妖しの姫で鬼神の『神代沙雪』を」



神代? 私は『茅野』沙雪だ。



「私の名は、神代なんかじゃないっ!」



私の名前だけは絶対に譲らない。


神代なんて名前は、私のものじゃない。


酷く歪めれた口から発せられる言葉がこの戦の火蓋を切った。