妖しの姫と天才剣士




黒い影が私の左腕を掠める。


っ!


散った血を求めるように群がった妖。


プツンと緊張が切れてしまって。


気がつかなかった。


今まで動こうとしなかった九尾の狐が一直線で駆けてくる。


迫ってくる顔はやけにゆっくりなのに。


動けない。


目を塞いでしまって音だけが私の頼り。


カキンッ


そんな音が響いた。


すると急に現実に戻された感覚があって。


地面にぶつかる衝撃もないし、妖だって動きを止めた。


直後。



「バッカじゃないの⁉︎」

「うるさっ」



耳元で叫ばれた怒号。


耳を塞いだ。


耳元では叫ばないで欲しいよ……!


上を見上げると総司の顔が。


焦ったような、怒ったようないろんな物がごちゃ混ぜになった顔。