「はぁっ！」



左之さんは上段に竹刀を振り上げた。


その一撃は重く掠めるだけでも危なさそうだ。


それを必死に躱し続ける。


足先で少し相手を惑わせて揺さぶる。


それを続けると左之さんのこめかみに青筋が浮かび出す。


見かけに違わず短気のようだ。



「ちょこまかと動きやがって……！」

「それが駄目とは言われてないので」



振られた竹刀を避けると、それに軽く結った髪の毛先があたる。



「……返しもムカつく奴だな！ お前！」

「それはどうも」



下から振り上げられた竹刀は自分の竹刀で流した。



「褒めてねぇし！」


クスクスと笑う声が聞こえなくもないがそんな事、気にならなかった。


こんなに、続く事なんて珍しい。


左之さんは私に決めの攻撃をする機会を中々与えてくれなかった。



「面倒くせぇ！ 次で決めてやるぜ！」



この発言を聞いて私は軽く口角を上げる。


短気は弱みだと、私的には思う。


人は怒りに任せると行動が単純になるものだ。


左之さんは私に最接近すると竹刀を大きく振りかぶった。






「短気は身を滅ぼしますよ。左之……さん？」