妖しの姫と天才剣士




最後尾を歩いている私。


もうすぐ屯所だな。


その時ピッと何かで指先を切った。



「った」



辺りを見回しても切れそうなものは何も無い。


草も、風もない。


何故、そんな中で指を切った?


指先に膨らんだ血を吸い取った。傷は浅いか。これならすぐ治る。


何か狙われたのだろうか。


でも、私を狙う事に意味など……


背筋に走る悪寒。


この感覚は間違いない。



『グルルゥゥル』



いつの間に⁉︎


気がつけば私は妖に囲まれていた。


血走った瞳は真っ直ぐに私を見ている。


獣のようにじわりじわりと私を追い詰めていて。


離れた場所に一番隊の人影が見えた。


既に建物の奥にきえかけている。


いつの間にかこんなに離されていたの?





この距離だったら気付かれる。


皆で戦えば早く片付くけれど、それは何だか憚れた。


危険な気がしてならない。


誰かが、死ぬ。


やるしかないか……。


半歩だけ足を下げ。


身を反転させ、奥へと走る。


そこに立ちはだかった妖は抜いた刃で斬り伏せる。

走りながら追いかけて来る妖を確かめる。


よし。向こうには行ってない。