妖しの姫と天才剣士




何もないまま夜––––




「今日は異常は特になし。かな?」



総司が前を向いたままそう呟いたのが聞こえた。



「そうですね。いつもよりも静かです」

「ただ、静か過ぎて不気味だな〜。長州は一体何を考えてるんだか」



おちゃらけたように言うのが聞こえる。


でも、総司が言う事は間違えてない。


いつもより動きが無い。普通なら志士が二、三人は現れるのに。


今日は一人も姿を見せなかった。


光も少ないこの場所は月が出ていないせいでいつも以上に不気味だ。


それに。



「嫌な匂いがするな……」



妖特有で、普通では感じられない匂い。


気の所為、かも知れない。


辺りの景色に私が変に気を張ってしまっていると言えなくも無い。


ま、気のせいで越したことはない。


妖が出ない内は人を見るだけでいい。


そのまま、私たち一行は京の見回りを終え、屯所へと向かった。