妖しの姫と天才剣士




「それよりも大変だっただろう?」



強引に話を変えられた気がする。


でも、あまり気にならない。


聞かなくてもいいと思ってしまった。



聞いたら、何が壊れる気がした。


馬鹿みたいだけど。



「? 何ですか? 大変って」



私も思考を逸らすために斉藤さんの話に乗る。



「総司は朝に弱いんだ。寝起きは悪いし、起きてからも寝ぼけてるしな」

「……意外」



そんな事全く知らなかった。


でも思い返してみればそんな事があったような気がしなくもない。


朝だけ居なかったり、縁側で惚けている姿を見た事が有るような。



「それは昔からだ。幹部の奴らは皆知ってる」

「……まぁ、幹部はと言葉は続くがな」



苦笑気味に笑んだ斉藤さん。


幹部は。という事は平の隊士には伝わって無いってことか。


たしかにそんな噂聞いた事ないな。


最後に涎を垂らして寝ている総司を鞘で小突いて部屋を出て行った。


斎藤さんもそんな事するんだ……。