妖しの姫と天才剣士





「…………あの、さ、茅野ちゃん。僕と一緒とか嫌でしょ?

副長には何か言っとくから––––」

「別に構わない」



スルリと出た自分の言葉に私が驚いてしまった。


良い、なんて普通じゃ言えない筈なのに何で。


でも、それが総司だったら良いや。


なんて思ってしまったり。


そんな自分がよく分からない。


あれ、私。逃走するつもりじゃ……。



「はぁ、行くんだったら早くしよ。……副長命令でしょ」

「ああ……うん」


総司は逆に私に圧されていた。



それと同時にスルスル出てくる言葉に私がびっくり。


こんな事いったら逃げ出せないじゃん。


それにまるで私が副長の命令を使って総司の部屋に行ってるみたい。







総司の部屋には布団が一つ敷いてあった。


寝ていたんだからそれもそうか。


でも、問題が一つ。


布団は一つしかない。


一人しか居ないんだからそれもそうだけど。


どうやって寝るの?



「茅野ちゃんは布団で寝てて。僕はそこら辺で雑魚寝してる」



言われるとは思った。


でも、もう秋も終わりかけ。


そんな時期に布団も使わないで寝たら風邪をひいてもおかしく無い。


だから。



「駄目!」

「……何で」

「な、何でって。風邪ひくよ? 一番組組長様が風邪引くわけにはいかないでしょうが!」



…………何言ってんだろ、私ぃ!