「してねぇよ! バーカ!!」



「ば、バカ!? 図星つかれたからって、それはないでしょ!」



「うっせぇバカ! バーカバーカ!」



「バカって言った方がバカだよ!」



……俺って、ほんとガキだな。
自覚してはいるんだけど、勝手に口が動いちゃうんだよな……。
でも、こういうこと言う俺に対して、頬をふくらませて必死に言い返してくる桜菜をかわいい、なんて思ってしまうんだ。



クソ……ほんとコイツはズルい。
なんで、どんな表情してもこんなにかわいいんだよ。
ムカつく……。



「もう、ひとりで帰る! こんな性悪と仲よくしてるって思われたくない!」



「おい、桜菜!」



桜菜は怒ってどんどん歩いていってしまう。



「待てって!」



あわてて追いかけて、制服の袖をつかむ。



「もう! ついてこないでよ! ストーカーで訴えるよ!」



俺の手を振り払うと、桜菜はそのまま夜道に消えていった。



「はあああ~~っ」



思わず、その場にしゃがみこむ。



俺、ダメだな。
結局いつも、桜菜に嫌われるようなことしかしてない。
がんばって桜菜に近づこうとしても、空回りしてばかりだ。
はぁ……俺、自分が思っている以上にヘタレかもしれない。