お父さんはいつもニコニコしていて優しくて……大好きだった。



そんなお父さんが死んだとき、病院で大泣きしたのを覚えている。
お母さんも、当時は毎日のようにお父さんの仏壇の前で泣いていた。



お母さんにはもう、悲しい思いをしてほしくない。
ずっと笑顔でいてほしい。
お父さんが死んでから、私はずっとお母さんの幸せを願ってきた。



お父さん……天国で元気にしているかな。



……って、こんなゆっくりしている場合じゃなかった!



私はあわててカバンを持って玄関で靴を履く。



「じゃあ、いってきまーす!」



「いってらっしゃい。気をつけてね」



「はーい!」



お母さんに見送られ、家を出る。