俺はコイツのことを女子で唯一、下の名前で呼び捨てにしている。
それも、俺の気持ちに気づいてもらう作戦……だったんだけどな。
アイツは下の名前で呼び捨てされることなんて、なんとも思わないみたいだ。
生徒が少なくなると、担任が俺と桜菜にホウキとチリトリを渡してきた。
「掃除終わったらゴミをゴミ捨て場に捨てて、俺のところにちゃんと報告にくること。わかったな?」
そう言いのこすと、担任は教室に出ていった。
気がつけば、教室には俺と桜菜だけになっていた。
……ふたりきりだ。
これは、俺の気持ちに気づかせるチャンスだ。
俺はそう思いながらホウキで床を掃く。
「…………」
「…………」
……って、沈黙じゃねぇか!
なにか話さねぇと……。