そして、迎えた放課後。
私と明日菜は、昇降口に先回りして、公生くんが降りてくるのを待つことにした。
「いい? ハキハキと言うのよ?」
「う、うん……でも……」
「こら! 今、ネガティブなこと考えたでしょ? ネガティブ禁止!」
「う、うん……はあ、明日菜やっぱり……」
「ダメ! ほら、来た!」
公生くんは、左手で前髪をいじりながら、右手に文庫本を持って、自分の下駄箱の前で立ち止まった。
「ほら、優衣! 今!」
「う、うん!」
明日菜に背中を押され、私は、公生くんの元へと近づいた。
「あ、あの……」
声が小さいのか、公生くんは気づいてくれない。
「あ、あの!!」
自分でもびっくりするほど大きな声が出た。



