「美雨、ありがとね…

まだ、1回目だけど兄貴が体育に出てくれる気になったのは美雨のおかげ」


小夜ちゃんは、本当に体育に行ったのか不安で教室まで確認に行ってたことはお兄さんにはナイショ。


嬉しそうな顔して戻ってきて、その顔を見たらあたしまで嬉しくなっちゃった。


「続くといいね」


「美雨のお弁当があれば大丈夫!」



いつの間にか空き教室前まで来ていて、ガラガラっと扉を開けた。


「遅い!」

そこには、すでにお兄さんの姿。


「ちゃんと体育受けたんでしょうね?!

ウソなら、次はないからね!」


脅すような口調でそう言いながら、イスに座る。



「お兄さん、お疲れ様でした。

これ、お弁当です」



シンプルな紺のお弁当袋を手渡す。



手が震える…


「楽しみ〜!

開けていい??」


ご機嫌な口調で聞いてきたけど、目はお弁当袋にむけたまま。


そんな姿がかわいくて


「どぉぞ…」


ドキドキしながら言った。


開けてるところを見てられなくて、あたしも自分のお弁当をあける。



「うわぁ〜! うまそう!!

いただきます…」

チラッと横を見ると、丁寧に手を合わせて姿勢を正してお箸を持つ。

シドさんも食べる姿が綺麗だったなぁ…


その姿を思い出したら、急にドキドキしてきた。

シチュー作ってたら、後ろから抱きしめられたことあったなぁ…

駅でも…


何思い出してるのよ…

恥ずかしい…


顔が赤くなっていくのを感じた。



「美雨、どーしたの?

顔、赤くない?」


「えっ?

あっ、なんでもないよ。

お兄さんの感想が気になって…」


「何言ってるの?!

さっきから、勢いよく食べてるじゃない!」


えっ?!

お兄さんを見ると、もうお弁当を半分くらい食べていた。

マスクはずしているから、あたしに背中を向けるように食べている。


表情はわからないけど…

喜んでくれてる気持ちが、背中に表れていた。



お弁当を食べるときは、マスク外すんだ…



思わずふふッと笑うと、



「ねっ、心配なかったでしょ?

兄貴は、美雨が作ったものなら、なんでも美味しいんだから!」