教室に戻ると、廊下に見たことのある後ろ姿があった。
「あっ、兄貴?!」
慌てて駆け寄る小夜ちゃん。
お兄さんが、小夜ちゃんのとこに来るの初めて見た…
体操服持ったままだから、体育終わってからここに来たんだ。
クラスの人も驚いてて、チラチラこっちを見てる。
「クッキーもらいに来た。
体育出たら、腹減った…」
小夜ちゃんに引っ張られながら、あたしの顔を見てそう言った。
わさわざ取りに来てくれたんだ…
「すみません。
持ってくるので、ちょっと待っててくださいね」
小夜ちゃんの横を通って取りに行こうとすると、グッと腕を引っ張られた。
それは、小夜ちゃんで…
「美雨…
私もどーしてもクッキー食べたいの…」
小夜ちゃんもクッキーが大好き。
多めに持って来ているけど、袋は一つ。
ここで分ける…?
いやいや、それはあまりに目立ち過ぎるでしょ?!
「美雨さえよかったら…
兄貴と一緒に食べてもいいかなぁ?」
小夜ちゃんの横で、お兄さんが突然のその言葉をのみこめない様子で、ポカンとしていた。
「あっ、それいいね!
だったら、お弁当も一緒に食べようよ!
小夜ちゃんのお弁当も持ってくるから待ってて!」
なんて素晴らしいアイデアなの!
そーだよね!
一袋しかないんだから、一緒に食べればいいんだよ!
小夜ちゃんとあたしのお弁当袋を持って、教室を離れた。