お兄さんは、またうつむくと
「そーだね…
暖かくなったら、髪を切るよ…」
ボソッとつぶやくと、そのまま何も言わなくなった。
電車に揺られること、1時間。
ビルが増え、街並みも変わってきた。
はぁ〜!
ガラガラだった車内も混み合ってきて、堂々と座っているのも気が引け始めた頃
「次、降りるから」
混んできたことで、肩が触れるほどの隣に座っていたお兄さんの声がした。
「はい」
小さく頷くと、さっと立ち上がるお兄さんの背中を追いかける。
改札を抜けて、駅を出ると商業施設が立ち並んでいる。
そこを抜け、しばらく歩くと閑静な住宅街に入っていた。
駅から歩くこと、15分。
「ここ」
キョロキョロしながら、歩いていたのでお兄さんが立ち止まった事に気付かず、追い越してしまっていた。
恥ずかしくて赤くなり、慌ててお兄さんの横まで戻る。
あれ?
来た道を振り返る…
駅から一回曲がったよね。
その角にはコンビニがあった。
次に曲がったとこは、公園でそこから数件先がお家…。
「お兄さん…
家まで複雑で初めて来る人は辿り着けないって…?」
「あぁ、それ、嘘」
サラッと答えると、《進藤》の立派な表札の横を通り抜けて玄関を開けている。
嘘?!
えっ?
あたし、だまされたの?!
目を開いて、口をパクパクさせていると
「ん?
入らないの?」
玄関を開けてまっていてくれる。
「はっ、入ります!」
慌てて玄関に入らせてもらった。

