「あ…あの、風邪って、ひどいんですか?

連絡しても、全然返事がなくて…」



「今朝は37度って言ってたけど、あれはウソだね…」


「嘘って…?」


「もっと高いはず…

親が休めないって言ってたから、気を使ったんだよ。

辛いなら、甘えればいいのにね…」


ふぁ〜とマスクで見えないけど、大きなアクビをしてる。


「え?!

じゃあ、小夜ちゃん、今家に一人なんですか?!」


「そーなんじゃない?

あの様子だと昼ごはんも食べてるかわかんないなぁ…」



そんなぁ…


小夜ちゃんが高熱を出しているのに一人でいるなんて…


そんなの、友達として絶対ほかっておけない!!




決めた!!


スクッと立ち上がり、


「お兄さん!

あたし、今からお見舞いに行っていいですか?」


真剣な眼差しでお兄さんを見つめた。



「今から?!

…いいけど、場所わかる?」



ゔっ!




「…ち、地図を描いてもらえたら、きっといけます!」



小夜ちゃんって、ここより都会に住んでいるんだよね…

あたし、徒歩通学だし、電車間違えずに乗れるかなぁ…?


難しい顔をして考えるあたしに


「オレ、連れて行ってあげようか?」


目元が優しく微笑んでいる。



「いいんですか?!

あっっ?!」


突然、思い出したことで大きな声をだしちゃった!

慌てて口を押さえた。


「ダメです!

お兄さんは、授業をきちんと受けてください!」


小夜ちゃんが、あと何回か休んだらお兄さんが留年するって言ってたのを思い出した。


「チッ! 小夜、アンタに話してたんだ…

帰れるチャンスだったのに…」


舌打ちですか?


目つきが険しくなり、あたしを見つめる瞳の奥が怖い…


「ち、地図を描いてください。

一人で行けますから…」


「…

オレんち、駅から複雑なんだよね…

地図も描きづらいし、初めて来る人が辿り着けたことないんだよね…

それでも行ける?」




そーなの?!


あたし、方向音痴なのにそんな複雑な道でたどり着ける自信なんてないよ…


でも、小夜ちゃんが一人で苦しんでるのに…


どーしたら…