「あの、すみません…」

机の横にしゃがみ込み、手を口元に持っていき、出来るだけ小さな声で言った。


「…」



あぁ〜!

こんな声じゃ聞こえないかぁ…




失礼します!

今度は、人差し指で肩をトントンとしてみた。


「…」



力が弱かったのかなぁ…


今度は、手のひら全体で叩いてみる。



「…何?」


身体が動くことなく、うつ伏せたままの姿勢で声が聞こえた。


気付いてくれた!

よかったぁ〜!



「あの…

小夜ちゃんのことなんですけど…」


ボソボソと話を始めたら、急に顔がこっちを向いた!!


お兄さん、メガネもマスクもしたまま寝てたんだ?!


驚いて、ぺたりと床に尻もちをついちゃった。


「…小夜が何?」


眠そうに、トロンとした目で見つめられた。

その目に引き込まれた。


切れ長なキレイな二重。



メガネの奥で、長い睫毛がバサバサ音を立てるかのように動いている。