新鮮な空気を大きく吸い込むように、大きく深呼吸をして、



「どーした?」

星ちゃんと紗弥ちゃんにペコっと頭をさげる。



「たぶん、クラスの子と同じことを聞きたいんだと思うんだけど…」


星ちゃんと紗弥ちゃんを見ると、うんうんと頷いて


「どーゆーこと?!」

と一歩、小夜ちゃんに詰め寄った。


「あれが、本来の兄の姿なんだよね…

いろいろあって、あんなふうになってたんだけど、ようやく立ち直って」


うつむきながら、ぽそっと言った。


本当にいろいろだよね…

一言じゃ語れない…


「そんなの言えばよかったじゃない?!

そしたら、進藤さんだってあんな辛い目に合わなくてもよかったのに…」


星ちゃんが申し訳なさそうに、私もそーしてしまった一人だから何も言えないけど…と続けた。


「言ったって、こんなこと信じてもらえない。

嘘つきって思われるくらいなら、変わり者の妹のほうがいいから」



「進藤さん…」



「高校生活は、兄の良さをわかってもらえずに終わっちゃうのかなぁって思ってたから、私も一安心したんだ。

あと1年の高校生活を楽しんでくれたらって思ってる」



「ごめんね…

何も知らないのに、見た目だけで決めつけちゃって…」

紗弥ちゃんの言葉に続くように星ちゃんも頭を下げた。


「二人には、感謝してる。

この1年、美雨を私の側に居させてくれたこと。

美雨と私を影で支えてくれたこと。

バレー部の仲間から、聞いてたから」


うちのクラスには残念ながらバレー部がいなくて、浮いた存在だった。

でも、他のクラスに行けばバレー部の仲間がいた。


「うちらは、何も…

なぁ?紗弥香?」

「うん…」

バツ悪そうに、顔を上げない二人。

こんな姿、めったに見られないから目に焼き付けとこ!


「兄は、きっともう大丈夫。



だから、よかったら美雨と4人で仲良くしてくれたら嬉しいんだけど…?」



「小夜ちゃん!!」

嬉しくて、思わず前から抱きついていた。


「美雨、涙と鼻水!

制服、クリーニングだしたばっかだから!」


あっ、あたし泣いてたんだ…


離れようとする小夜ちゃんをさらにギュッと捕まえる。


あたしの後ろから手が伸びたと思ったら、星ちゃんが抱きついてきた。

小夜ちゃんの後ろには紗弥ちゃん!


「仲良くする!

仲良くして!

仲良くなって!!」


その声は涙声。

「星ちゃん、あたしの制服に涙付けないで!」

「ゴシゴシ拭いちゃう!!」

背中に顔を擦り付ける。


「やめてよ!!」


「近藤さんも、私の背中汚さないでください!」

「近藤さんだって!

名前で呼んでくれたらやめてもいいよ!」

今度は紗弥ちゃんも顔を擦り付けてる。

「わかった!

わかったから!

紗弥香!

私だけ、前も後ろもってやめて」

そう言ってる小夜ちゃんの声も震えていた。




〜end〜