「お兄ちゃんたちのサッカー部のキャプテンを決めるとき、私がお兄ちゃんしかいない!って言ったから、やってくれたんでしょ?」


「あれは、顧問に泣きつかれたし、他にやるヤツがいなかっただけ」



「受験の滑り止め受けなかったのも、私がいらないでしょ?っていったから…」

「違うよ。

あれは、本当に開明しか行く気がなかったんだ。

サッカーのすごい監督がいて。

あのときは、他の高校にそれ以上の価値が見つけられなかったんだ」


「彼女と付き合ったのは、私と仲良くしてくれて、勧めたからでしょ?」

「違うよ…

小夜とアイツが知り合う前から、オレは好きだったんだ。

小夜と仲良くなって、話すきっかけが出来てスゲー嬉しかった…

って、何を言わせるんだよ…」


「でも、でも、振られたのは、私が彼女に一緒の高校じゃなかったら無理だよねって言ったから…」


「そんなこと言ったのか?

それは、初耳だけど…



その前からギクシャクしてたんだ…

オレはサッカーばっかりで、相手してやれなかった。

アイツに気になるヤツがいること気付いてた。それも気付かないフリしてたんだ。

小夜が言ったこととは関係なく、同じ高校でも別れてた」


何話してるんだ…オレ…


「じゃ、お兄ちゃんが今、こーなってるのは私のせいじゃないの?」


あぁ!!

どこまで聞きたいんだ?

こーなったら言ってやる!

聞けよ!



「そーだよ!

ボタンが死んで、ペットロスで受験に失敗して、好きな人が出来たっめ彼女にフラれて、心がポッキリ折れて引きこもったのは、誰のせいでもない、オレの心の弱さだ!」




「そーだったんだ…

私、持久走の最中に気付いてお兄ちゃんに謝らなくちゃって…

すごく頑張って走ったのに…」



「小夜は全く関係ないどころか、オレのせいで、やりたかった水泳を諦めて、同じ高校に連れてこられた被害者だよ…」


「被害者だなんて思ってない。

お兄ちゃんのこと、キライになろうって思ったこともあった。

でも、キライになんてなれなかった。

ずっと、ずっと憧れていたから。

水泳も続けてたからって、オリンピックに出られるレベルじゃなかったし」


オリンピック狙ってたのか…?


それは、ちょっと目標高いなぁ…


「高校のことは、ビックリしたけど、どれだけ頼んでもダメだったことが、お兄ちゃんのおかげで叶うことになって、むしろ感謝してる」


「恨んでないのか…?

高校生活3年間ムダにするんだぞ?」


「私は、それより大切なことだった。

それに、高校生活ムダにしてないよ。

ここに来てなかったら、美雨には出会えてなかったから」



「小夜…」


「ありがと、お兄ちゃん!

これからもよろしくね!」


「…おぅ!

小夜、オレが10位以内に入ったら、なんでも1つ言うこと聞くって言ってたな?」


「あぁ…

そんなこと言ってたね…

何?

イタイことは、イヤだよ!!」


「どんなこと想像してるんだよ?!」


「ほら、お兄ちゃん後輩の子にボールぶつけてたじゃない!」

よく、覚えてるなぁ…


「あれは、全然言うこと聞かないからだよ!

ぶつけてないし!

ギリギリで!


…小夜 …

幸せになれよ!」


「えっ?」


「この2年、本当に迷惑かけた。

全部なかったことになんて言えない。

それは、これからのオレの姿で償っていくよ。

だから、小夜はこれからは、自分のことだけ考えて進んでいけ」


「お兄ちゃん…」


「もうすぐ、美雨がゴールするんじゃないか?

行かなくていいのか?」


さっきまで止まっていた涙を必死に堪えながら、

「うん!

私、絶対幸せになるから!」


それ以上、言葉にならないと思ったのか踵を返して走っていった。


話さないとわからないんだな…


小夜がそんなこと思ってるなんて思いもしなかった。

恨まれていて、当然だと思っていたのに。