『和泉大丈夫?』





『…なにが。』







『さっきから真白くんの方見てぶすくれてるから…』






西野皐月。
私の親友。

優しくて彼氏もいる。




『…そんなことないよ。ただ、真白が用事だなんて初めてだから…』





『お互いもう高2なんだよ?用事くらいできるよ。和泉もそろそろ広瀬離れする時期なんじゃない?』






…真白離れ。
そんな事考えたこともなかった。

物心ついた時から真白と一緒に過ごして。
それが当たり前になってた。






『…私、明日から真白離れ、してみる。』






一人で帰れるようになって、一人で学校行って、真白に頼らないようにするんだ。





『じゃあ私帰るね!あんまり遅いとお父さん心配するし!』






『気をつけるんだよ!』







私の家は父子家庭で、お母さんはいない。
小さい頃に病気で亡くなった。





お父さんはいつも優しくて、私にはもったいないくらい。







『ふぅ。』






電車のホームに着いて、立ちながらスマホをいじる。






『よっ。』







『田辺!どしたの?バス通じゃなかった?』






『やっぱり永瀬が気になって。』







『…私そんな頼りないかな。』







『そんなんじゃねーよ。』







そう言って田辺はポンポンと私の頭を叩いた。






『じゃ、また明日な。』







結局田辺は私の家の前まで送ってくれた。






『うん。わざわざありがとう。またね!』






家に入ると、弟の奏が走ってきた。






『お姉ちゃん!おかえり!』






『ただいま、奏〜。』






奏はまだ4歳で、お母さんは奏を産んですぐに亡くなった。


奏はすごく可愛くて、お母さんに似てる。






『じゃあー、買い物行こっか!』






『うん!』







私服に着替えて家を出る。
奏は隣で歌を歌いながら歩いてる。





『……真白?』








私の視界には、真白と綺麗な女の子。
二人で笑いながら歩いてる。


…そっか。
真白の用事ってこれか。


私はずっと真白に迷惑かけてた。




『…真白離れ、しなきゃな。』





『お姉ちゃん?』






『さ、行こっか!』






私は真白と会わないように、反対方向に歩き出した。