想太は山本と出先の仕事を済ませ、山本の運転する車で会社へ向かっていた。
今日可南子の異動の話を知って以来、想太はずっとふさぎ込んでいた。
車の中でも全く喋らず外ばかりを見つめている。
そんな想太を見かねた山本は一人で喋り始めた。
「今回の人事異動には、部長も驚かれたんじゃないですか?」
「あ、ま、はい・・・」
「朝倉さんも長いこと東京で頑張ってきたから、九州の方に帰りたくなったんでしょうね」
「課長、理由ってそれだけなんですか?」
想太は、山本がちょっと困った顔をしたのを見逃さなかった。
「僕は、そんな風にしか聞いてないですよ・・・」
山本は明らかに動揺していた。
1年前に山本は開発事業部の瀬戸から、可南子と結婚する予定だと聞いた。
しかし、その1か月後に二人は別れてしまった。
そして、それからしばらくして、可南子は異動届を会社に出した。
山本は今でもその事がこの異動の一番の理由だとそう思っている。



