翌日の朝、想太は机の上に溜まっている書類に目を通していた。
想太はこの日本の連絡、報告、相談の徹底したシステムにまだ慣れない。
くだらない書類が多すぎるために、あっという間に机の上が書類の山になる。
部長決裁があってもなくても関係ない書類ばかりなのに・・・

想太は、いつものように書類の山の中から大切な急を要する書類だけを抜き取り中身を確認していた。

その書類の山の中に人事異動の書類があることにまだ気づいていなかった。



可南子は、朝からずっと想太の様子をうかがっていた。
今日の想太のスケジュールはすでに確認済みで、今は部長室に籠って仕事をしている。
あの書類の山とにらめっこしている想太が、ガラス張りの壁を通してよく見えた。

可南子は、今夜こそは想太にきちんと話をしなければともう一度心に誓った。

想太は書類に目を通すことを一番嫌っていた。
今も、何度もため息をつきながら書類を見ている。

大事な事は口で伝えてほしい。
想太はそういう風にいつもつぶやいた。