可南子が東京へ出発する前日、二人はずっと一緒に過ごした。
いつもの高台の公園のベンチに座り、持ってきたお菓子を広げてささやかなパーティを開いた。


「可南子、本当に行くの?」


そう言うと、想太は下を向いて地面を靴で蹴り始めた。
12歳の想太は、どうして可南子は遠い学校へ行かなきゃならないのかいくら考えても納得できずにいた。


「この交換日記だって次は俺の書く番だけど、書いても可南子に渡せないじゃん。

東京の学校にまで、俺は持って行けないよ・・・」


想太にとって可南子は全てだった。
可南子は、いつも想太の味方で想太の事を必ず見ていてくれた。
想太は可南子がいない明日からの生活を考えると、息ができなくなるくらいに怖かった。


「想ちゃん、手紙があるじゃない。
私、毎日、想ちゃんに手紙を書くから想ちゃんも私に手紙を書いて。

そしたら、この交換日記と同じ。
手紙を読んで、想ちゃんの事を思い出すから・・・」