可南子は飛行機の中で、想太と子供の頃の楽しかった話をたくさんした。
何だかんだ言っても福岡は想太の故郷だ。
帰りたくない事情が山ほどあるのは分かっている。
でもいつかはしっかり向き合わないといけない。


「想ちゃん、こうやって楽しかった話ばかりしてたら、福岡に行くのが楽しみになってきたでしょ?」



「全然」



「私も無理にとは言わないから。
でも、ちゃんと、仕事には取り組んでほしい。

後は、ホテルに籠ってればいいんだから」



「仕事はちゃんとやるよ。
そんなの決まってるだろ」



「よかった・・・」



「可南子は、実家には行かないのか?」



「うん、今回は想ちゃんと一緒にいるよ。
課長から部長の事を、絶対に目を離さないでって言われてるし」


可南子は、想太の顔を覗き込んで微笑んだ。


「想ちゃん、私がついてるから大丈夫だよ」