想太達が横浜支社に着くと、思いのほか歓迎ムードで驚いた。
どうやら、イケメン御曹司で若くてやり手の部長の噂は、本社を超えてここまで広まっていたようだった。

所長室へ向かう想太を、若い女子社員はわざわざ見に来る有様だ。
想太は全く気に留めることもなく、ポーカーフェイスのまま歩いていた。



可南子は電車の中で坂上所長の人となりを想太に話そうとした。


「可南子、そんな事、俺にとってはどうでもいいことなんだけど。
その人がどういう人間かなんて、自分で判断するから、そんな情報要らない」


人を偏見で見たくない。
想太は、そう言った。


可南子は、しばらく落ち込んでしまった。
人を偏見で見ない・・・
考えてみたら、想太は何も変わっていない。
大人になったという理屈を並べて、一番、変わっていたのは可南子自身だった・・・


「失礼します」


想太は堂々と坂上のいる部屋へ入っていった。