可南子は駅を出て、急ぎ足で家へと向かった。
駅から家までの距離は歩いて7分程度だが、途中、人通りがなくなる場所がある。

コンビニを過ぎて公園沿いの細い道に入ろうとした時、公園の入口の低い柵に想太が腰かけているのが見えた。
ジーンズをはいてグレーのパーカーを着ている想太は、洗いざらしの髪をただ乾かしたような状態で下を向いて携帯をいじっていた。


可南子の目には、12歳の想太にしか見えなかった。

想太は可南子に気づき、「おかえり、可南子」と小さな声で言った。


「想ちゃん、ここで、待っててくれたの?」


可南子は罪悪感でつぶされそうだった。


「コンビニの帰りだから」


想太はそう言って、可南子に缶コーヒーを渡し自分の飲んだ空き缶を笑って振って見せた。


「想ちゃん、ごめん・・・
本当は、今日、合コンだった・・・

嘘ついて、ごめんなさい・・・」