「何せ、アメリカの生活が長くて、物の考え方がアメリカ式になってるんだ。
日本の会社のノウハウを、しっかり教えてほしいんだよ」



「私がですか?」



「しばらくの間でいいんだ。
朝倉くんも他の仕事もあって忙しいとは思うけど、やってほしい」


可南子は、課長の切実な頼みを無視するわけにはいかない。
本当は嫌でたまらなかったが、課長の顔を見たら引き受けるしかなかった。


「はい、分かりました」



「ありがとう、よろしく頼むよ」


すると、遠くで「おはよう」という声がして、想太が颯爽と現れた。
スーツの上着を脱ぎそれを肩にひっかけて、まるで昔のどこかの若大将のようだ。

しかし、モデルも顔負けの容姿をした想太はそれもそれで様になっている。

課長が私に向かって目配せをした。


小さい頃から、可南子と想太の関係性は変わらなかった。
常識的な可南子と、破天荒な想太。

幼い頃から可南子は想太のしつけ役だった。