~15年前~


「可南子、可南子~~」


想太は可南子の家の前で、可南子の部屋の窓に向かって叫んでいた。
もう塾から帰ってきている時間のはずなのに、可南子は中々窓から顔を出さない。

想太は、渡しそびれた交換日記を可南子へ届けにやってきた。
しばらく待っていると、可南子がやっと顔を出してくれた。


「可南子、これ」


想太はそう言いながら、交換日記を高々と差し出した。
すると、可南子は気まずそうな顔をして想太に見えるようにバッテンを作っている。

想太はやっとその意味に気がついた。
可南子の近くにきっと親がいるに違いない。

でも、想太は交換日記を可南子にどうしても渡したかった。
帰る事に躊躇して可南子の家の前をウロウロしていたら、玄関から誰かが出てくるのが分かった。


ヤバい・・・


そう思った時にはすでに遅かった。


可南子の父親が、想太の方へ大股で歩いてきていた。