すると、シスター田中は沈んだ表情を浮かべてこう言った。


「それは・・・

あなたに渡さないという事は、あなたの目に触れてはいけない事。
だから、私達はその手紙を処分しました。

酷な事だと思うかもしれませんが、分かってくださいね」


可南子は茫然と話を聞いていた。


この15年間、可南子は想太を責めて生きてきた。
想太に私は捨てられたのだと・・・

先生は12歳の子供だというけれど、私達は相手を思いやり必死に生きてきた。
私達が書いてきた手紙はただの紙切れなんかじゃない。


可南子は、ぼんやりとそう考えていた。
涙すらでてこなかった。



想太は、もうこれ以上、可南子の苦しむ姿を見たくはなかった。
真実を知れた、それだけで十分だ・・・
先生達のやってきたことも想太には理解ができた。


もう、終わったこと・・・
俺達は、結婚する・・・


「可南子、もうそろそろ、おいとましようか。

先生達も忙しいだろうから」


想太は小さな声で可南子へ伝えた。