「単刀直入に言うと・・・

僕は、2年間もつき合ったことで可南の気持ちを自分の物にしたつもりでいた。

でも、僕は、12歳の思い出の中の少年に負けたんです。

僕がどんなに努力をしても、可南の心の中から想ちゃんという12歳の男の子を追い出すことはできなかった」


瀬戸は、想太の顔をずっと見ていた。
自分が負けた相手が、今、目の前にいる。


「だから、僕は、負けは認めています。

僕があなたに言いたかったのは、可南も、15年間、あなたを愛しすぎて苦しんでたということ」


瀬戸は、不思議と心が軽くなるような気がしていた。


「瀬戸さん、俺と可南子は8月に入ったら結婚します」



「でしょうね・・・
そうじゃなきゃ、可南が可哀想すぎる」



「必ず、幸せにします」


想太はそう言って、頭を下げた。


「やめてくださいよ。

でも、あなたの口から聞けてよかった。
これで俺も前に進める気がします」


瀬戸はそう言うと、自分の食べた分の代金をテーブルに置いて出て行った。

想太は一気に酔いが回ってきた。



ひとつ、ひとつ、整理するということは、可南子の今までの人生を垣間見ることだった。