「想ちゃん?」


可南子はすぐに想太だと分かった。
だって、想太に合鍵を渡していたから・・・


「ばれた?」


想太はもう子犬のわんこに戻っていた。
そして、照れくさそうに、可南子の隣に座ってきた。


「久しぶりに自分の家に帰ったら、お化け屋敷になってたよ」


可南子は驚いて「なんで?」と聞くと、


「玄関開けたら、冷たい空気がス~ッて俺を取り囲むんだ・・・

もう、怖くて、一歩も部屋に入れなかった」



「一歩も?」



「そう。

でも、すぐに可南子の家に行くのは嫌だったから、マンションのエントランスで時間潰してた」


可南子は笑った後に「ごめんね・・・」と言った。


「瀬戸さんの事、想ちゃんのしたいようにしていいよ。
そんな事で想ちゃんとケンカするなんてバカみたいだもん」



「いいんだ。
俺の方こそごめん。

可南子は、俺とあいつの事を思って話をしてくれたんだもんな」