想太と可南子は、ほとんど会話をすることなくお互いのマンションに着いた。

最近の二人は、可南子のマンションで同棲に近い生活をしていたので、可南子は普通に一緒にマンションに帰るものだと思っていた。

すると、不機嫌な想太は自分のマンションの前で立ち止まり、


「俺、今日は、自分ん家に帰るわ」


と、可南子の目も見ずにそう言った。


「そうなんだ・・・
分かった。

おやすみ・・・」


可南子は笑顔でそう言った。


可南子は家に帰ると、自分のためにコーヒーを淹れた。

久しぶりに、一人で過ごすこの部屋はこんなに広かったかしら?

そう思うと寂しさが一気に襲ってきた。

あんなにこだわっていた瀬戸の事も、もう、どうでもよくなってきた。
今の可南子は、想太のぬくもりがただ恋しかった。

ミルクと砂糖をたっぷり入れたコーヒーを飲みながらぼんやりとテレビを見ていると、玄関の方でカチャリと小さな音がした。