「え、なんで?」


美咲は瀬戸の事を振った可南子の事を、いまだに理解できずにいた。

高校、大学とアメフト部に所属していた彼は、全国でも有名な選手だった。
しかし、ケガに悩まされ、大学卒業と同時にアメフトは辞めこの会社に入った。
筋肉質な体に甘いマスクの瀬戸は、この会社の人気者ランキングのいつも上位にいた。

それでいて性格もいい。
美咲は可南子の彼氏が瀬戸と知った時は、内心、少し落ち込んだほどだ。
それほど瀬戸はいい男だった。


「あ、それは、その・・・

瀬戸さんが、元気そうでよかったです」


美咲は瀬戸を呼び止めたものの、何も話せないことに今頃気づいた。
軽く会釈をして、とぼけた笑顔でその場を去ろうとしたら、


「朝倉さんは、やっぱり長崎に行くのかな?」


瀬戸は、美咲にそう聞いた。


「それは瀬戸さんが一番分かってるでしょう。

可南子さんみたいな真面目な人間は、会社にちゃんと従います」