想太は、捨て台詞を残して可南子の前からいなくなった。


可南子は、幼い頃の想太を思い出していた。

可南子にだけは、優しかった想太・・・
それはもう、15年も前の話・・・

27歳になった可南子の心の中には、今でも12歳のままの想太がいる。
お互い歩み寄れないのなら、再会なんてしたくなかった・・・


オフィスに帰ると、美咲が可南子を捜していた。


「可南子さん、今日の夜は空いてますか?」



「え? うん、今夜は大丈夫。空いてるけど。

何? 合コン?」



「それが、急きょ、柿谷部長の歓迎会をすることになったみたいで。

部の人達も、大体、参加らしいですよ。

じゃ、一緒に行きましょうね」


歓迎会・・・
可南子は、何かひと波乱ありそうな嫌な予感を振り払った。