安静とはいえ、寝てばかりは疲れる

見飽きた天井を見ながら、ため息


新選組を思う

敬助の姿がなく、代わりになんだか

ほそっこい男がいたなぁ


歳三よりも前を歩くから、偉いらしい


挨拶すら出来なかったから、優のこと

聞けなかったし

敬助が病ではないかと心配になった


新選組というより、歳三のことが未だ

忘れられないのかと


呆れる


懐妊をきっかけに、私の世話をする女中が
出来た


多津というが

私は、この人が苦手だ



「山猿のくせに」

「どうして私が山猿の世話を」

「早く産んでしまっておさらばしたい」


これが彼女の口癖



私は、また喋ることをやめた


多津が、慶喜様に


「依里様だけでなく、他の側室も大事になさいませ!!
安静故、見舞いはいりませぬ」


そう…

慶喜様と会うことがなくなったから



他の側室のことは、私も気になっていたけど、ここに頼れるのは慶喜様だけ

つい甘えてしまっていた



お腹の張りが良くなり、少し起きてもいいと医者が言ったが


「この部屋から出ることは、許しません!」


女中と揉めて、慶喜様を困らせたくない

私は、素直に従った


自ら閉じこもるのと、閉じ込められるのは
全然違うのね

喋らないことも、畳と睨めっこも

慣れていたはずなのに……


そうだ……


いつも、優がいた

外に行こうと誘ってくれた


脱走すると、必ず連れ戻して

説得力のない説教があった




落ち込んでいた時は、必ず兄が来てくれて




東宮様も、いつも話し相手になってくれて




ここには、慶喜様しかいない






その慶喜様にも会わせて貰えない






こんなにひとりが辛いと

感じることは、なかった


少しでいいから、会いたい


慶喜様を恋しく思った


だから、コソッと部屋を出て

慶喜様のお部屋を目指した


「部屋を出るなと言ったでしょう!!」


多津に見つかり、部屋に戻された


ドサッ

突き飛ばされ、畳に転がる
必死にお腹を庇った


「今度、言いつけを破ったら
こんなんじゃすまないわよ!!」




説教の方が良い

ぽたぽたと涙が畳に落ちる


私の味方が慶喜様だけなように

お腹のお子を守れるのは、私だけ



私は、さみしいとか、辛いとか

そういう感情を殺すことにした



楽しかったことを考えようと

心に決める


歳三や優、兄や東宮様、新選組の幹部達

隠密の仲間、色々なことを考え


笑って過ごす



お子の為




ちゃんと産んでみせる!!!