すぐにスマホが鳴った。


『じゃあ七時頃、うちに来てください。待ってますね』


ん?

その文章に、千紗は少し違和感を覚えた。


「待ってる、って。取りに行けばいいのかな?」


そう、この時の千紗は、頭の中でタッパーか器に入った、いくらを想像していた。






それが違うと分かったのは、チャイムを鳴らして、玄関を開けた矢嶋を見たときだった。


「いらっしゃい。どうぞ、あがって?」


矢嶋は、そういうと、スリッパを指差した。


「えっ、あ、はい」


千紗は、慌てて言われるまま、玄関の中へと入る。

どういうことだろう。

いくらを渡すくらいなら、ここでも十分だけれど。